91. 演技派フランス人に翻弄される私
先日、とあるパリのホテルに滞在したときのこと。ロビーの横にあるサロンに腰をかけておいしい朝食を食べていると、メイドさんがそれぞれのテーブルをまわって、部屋番号を聞きにきました。自分の番に備えカードキーをテーブルに置いて待っていたのですが、メイドさんは私の隣に座っていた男性ふたり組の席からなかなか離れません。気になって様子をうかがうと、何やら不穏な雰囲気が漂っているではありませんか・・・
「お客様の部屋番号を教えてください」
「いや、番号なんてないけど」
「え?」
「僕たちはこのホテルの宿泊客じゃないからさ」と、答える男たち。
ヤジ馬根性で会話に耳を傾けていると、彼らは朝食だけを食べにきたと告げ、料金を請求するメイドさんに対して、ホテルの入口には朝食を無料で食べてはいけない、なんて書いてないでしょ?誰が禁止してるわけ?もちろんお金は払わないよ、と憮然とした態度で続けるではありませんか!確かにビュッフェ形式で誰でも簡単に座れるスタイルの朝食ではあるけれどそんな無茶な・・・ムッシューの姿をまじまじ見ると、ひとりはスーツでびしっときめたビジネスマン風、もうひとりはカジュアルだけど安物とは思えないシャツを着こなすアーティスト風。どう考えてもお金がなくて困っているようには見えません。部外者とはいえ、いくらなんでもその言い分はないだろうと腹が立ってきた私は、無意識にもじーっと睨んでしまいました。
困り果てたメイドさんが先輩にヘルプを求め、二人がかりで説得し始めると今までムッとしていた男たちがニヤッと笑みを浮かべて、「冗談だよー!」とひと言。おおおおい、今までのは作り話だったわけ?!全然笑えないよ!と心の中で叫ぶ私。ジョークというにはあまりにフリが長いし、馬鹿にされた気分で、さぞかしメイドさんも怒っているだろうと思い隣を見ると、だまされた彼女たちも
「やっぱり、そうよねー、怪しいと思ったのよ」なんて言いながら大笑い。どうやら、真剣にだまされていたのは私だけだったようで・・・
よくよく考えると、フランスに来て以来、こんな風に冗談を真に受けて痛い目にあったことが度々。深夜近くにたどり着いたユースホステルのフロントで、「予約入ってないし、場所間違ってるんじゃない?」と言われ、涙目でその場を去ろうとして、「ウソだよ!」と引き止められたことも。私がアホという問題もありますが、フランス人の演技力はそうとうなものだと思います。彼らの表情をじーっと見ながら、ジョークかもしれないと疑いつつ話を聞いていても、いつもからかわれて翻弄される私です。
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